社会貢献活動に終わらせない居住支援 | シンポジウムの登壇者な不動産屋

居住支援が必要なのは低所得者だけではない~東村山の不動産会社

11月23日、東京都多摩障害者スポーツセンター(東京都国立市)で開催された、第38回共同連全国大会の分科会に登壇者として、私(阿部)が参加しました。

共同連は、「障害者のあるなしに関わらず、共に働く場、共に暮らす場をつくり、社会全体を共に生きる場としていく」ことを理念として、1984年に結成されています。さまざまなNPOや福祉団体のネットワークというイメージでしょうか。

毎年、各地で開催されている共同連大会が今年は東京多摩での開催となり、私は分科会『多様な居住支援の取り組み』でお話しさせていただいたというわけです。

山谷で日雇い労働者の住まいを始めとした活動をされている「ふるさとの会」さん。障がいを持つ人たちの一人暮らしを支える「たこの木クラブ」さん。そして大阪から引きこもりの当事者グループである「ウィークタイ」さん。そして、私の4人が登壇しました。

昔の居住支援は低所得者に対するものという印象でしたが、住宅確保要配慮者という言葉が定着しつつある現在、社会が複雑多様になるほど、さまざまな属性の人が住まいの問題を抱えていることが顕在化し始めています。

解決策はない、でも取り組まなければならない~東村山の不動産会社

議論が深まるほど、解決策や課題という名の傷につける特効薬というものは存在しないこと。そして、それがわかっていても取り組んでいかなければならないやるせなさを改めて思いました。

重度の精神障がいを持つ人の中には、一人暮らしをしていると近隣に何らかの粗相をしてしまう人もいます。きれいごとを言ったところで、それはやっぱり周囲の人たちからすれば迷惑なわけです。そこをどう克服していくか。

また、山谷のドヤに住む人たちの中には、問題行動を起こしながらでしか、周囲とコミュニケーションを取れない人がいます。そういう人をコミュニティから出入り禁止にしたり、排除したりすることはできます。

しかしながら、その人がそういうコミュニケーションしか取れない背景には、何らかの人生経験や転機が存在するわけです。そこを見ずにおいて、本当の意味での支援は難しいだろうことを感じました。

そして、目からうろこだったのが引きこもりの住まいの問題です。引きこもりには、引きこもる家があるのだから居住支援は必要ないと考えてしまいそうですが、実はそうではないのですね。

写真提供:Akiyo Wadaさん

引きこもり当事者は家が安全・安心な場となっていない人も多い~東村山の不動産会社

引きこもっている家が、家族との関係性等々で安全・安心な場所ではない限り、当事者は次のステップには進めないわけです。だから、引きこもり当事者に必要なのは就業支援より先に、「安全・安心な住まいづくり」が必要になります。具体的には、一人暮らしを始めることですが、これにも周囲の支えがいります。

一人暮らしに慣れながら、就職活動をするのがよいのですが、無職で部屋を借りるのはやはり難しい現実があります。また、いきなり賃貸契約を結んで一人暮らしを始めるというのは、それまで何らかの事情で引きこもりだった人にとっては、少々ハードルが高いでしょう。

一人暮らしを始めると、寂しさを感じることもあります。そう考えると、“居場所”の確保も大切になってきます。お話しをうかがいながら、「引きこもり当事者の居場所」⇒「一人暮らし体験」⇒「就活支援」⇒「自立」(困ったらいつでも戻って来てOK)という、ワンストップでの取り組みの必要性を感じました。

私は何を話したかというと、「社会貢献活動に終わらせない居住支援」というテーマで、同性カップルの住まい課題について話すと同時に、スモールビジネスやNPOに関心のある人が不動産事業者となって居住支援に取り組む、そんな人が増えたらいいということをお伝えしました。

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