URは昔から低所得者向け住宅というわけではない~東村山の不動産会社
先日、病院で順番を待っていたとき、テレビで国会中継をしていました。
本を読んでいて、あまり本気で観ていなかったのですが、UR都市機構のことをやっているのが聞こえたので、本のページを閉じました。
UR都市機構こと、独立行政法人都市再生機構(UR)は戦後の復興期から高度成長期、農村部から都市部への人口流入による住宅不足に対応するためにできた、日本住宅公団を前身とする国の組織です。
参議院予算委員会での質問者は、日本維新の会の東徹議員でした。
東議員の質問の趣旨を勝手にまとめると、今やURは有名芸能人をCMに起用してタワーマンションを手がけて、民間へのサブリースにも参入して立派なデベロッパー。もう当初と役割が違っているのだから民営化してはどうか。精算すれば1.5兆円国に入るではないか。
増税よりも前にやれることはあるだろうという話でした。
URが経営する中央区の賃料371,100円のタワマンを示し、これは低所得者向けではない。公的な住宅サービスであればサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)、自治体の市営住宅等がある。これは2重行政、3重行政であるという指摘です。
まず、東議員の目の付け所の良さには敬意を表しつつ、私の意見を述べます。
そもそも、URは低所得者向け住宅を供給するためにできたわけではありません。都市部の人口が爆発的に増えていって、民間だけではその供給が間に合わなかったことから設けられました。
もっと屁理屈を言えば、当時の日本はみんなが貧しかった時代。今の拝金主義者たちの足元でないがしろにされている低所得者とは種類が違います。
まず今の日本に必要な住宅政策は、URを含む住宅行政の民営化ではありません。
首相も国交相も答弁していましたが、「相矛盾するようだが、民業補完の徹底・財務構造の徹底化。撤退も視野に、民間へのサブリースで収支構造の改善をはかる」というそれで当面はよいのではないでしょうか。
私はURが民間の金の亡者の手に落ちるくらいなら、国がしっかりそろばんをはじいてもらいたいと思います。あくまでもURに関しては、ということです。
不動産は何でも民営化もおかしいし、何でも行政にまかせろもおかしい
一方で、URの民営化の是非とは別に強調しておかなくてはならないのは、こと不動産事業に関しては何でも行政に手綱を握らせておくのがいい、とはならないという点です。
日本は持ち家政策を手厚くしてきた一方で、民間賃貸住宅に関しては本当に薄いのが特徴です。
こっちはこっちで公営住宅をやるから、民間は勝手にやってくださいという感じで、民間賃貸住宅に対する施策というものが不十分だったといえます。
2017年より、国の住宅セーフティネット制度がスタートしていますが、どれだけの知名度があるでしょうか。これにもまだ課題があります。
民間賃貸住宅に対する施策を手厚くすることが、今いちばん求められます。間違ってはいけないのは、「では公営住宅を増やします!」ではないという点です。
公的な住宅そのものを増やしたところで、生活保護申請時の扶養照会のようなことが起こり、当事者が利用を尻込みするような制度になることは火を見るよりも明らかです。
また、民業の圧迫は空家や空室の増加にもつながります。
行政が行うべきは、これだけ空家も増えて、借り手市場と言われる賃貸住宅事情がありながら、なぜ安心な住まいを求めるという当たり前の権利からこぼれ落ちる層がたくさんいるのかを考えて対策することです。
それには、行政自らが不動産オーナーになって選別を行う公営住宅ではなく、住まいの貧困に取り組むNPOや不動産事業者に対して、物心両面での支援を含めた連携を強化することが求められます。