【提言】リースバックは「安心」ではなく構造で見よ

要点整理

リースバックは、自宅を売却しながら住み続けられる仕組みとして注目されていますが、契約内容次第では短期間で資金が枯渇し、住まいも失うリスクを伴います。背景には高齢者の資金不安や住宅観の変化があり、制度そのものではなく運用と情報非対称が問題です。利用にあたっては、価格・賃料・契約形態の構造を理解し、専門家の関与を前提とすべきです。

リースバックはなぜ問題化しているのか

リースバックに関して、社会問題となっています。リースバックとは、自宅を売却して、買主等から、その家を借りて住むというものです。

不動産適正取引推進機構のメールマガジン「RETIO メルマガ第 234 号」(2026 年 5 月 1 日)には、「家族がリースバック契約を締結したが、売却で受け取る資金と支払う家賃を計算すると数年で資金不足となる契約となっており取り消したいなど、令和 6 年度では全国の消費生活センター等に 200 件を超える相談が寄せられ、緩やかな増加傾向が継続しています。当機構にも相談が寄せられています。」と書かれています。

また、2026 年 4 月 5 日号の東京民報には、『自宅奪うリースバックの罠 「住み続けられる」宣伝も』という記事が掲載されており、そこにはこのようにあります。

―急な入院費などの資金需要や、年金額が少なくて生活に困窮する場合など、持ち家がある 50 歳以上がターゲットとされているようです。中には年齢のため銀行から正規の住宅担保ローンが組めないが、「子や孫に借金を残したくない」という思いにつけ入る商法も横行し、詐欺まがいの契約も増加しているとして、国もガイドラインの策定などを視野に入れている―

いかにも「法には違反することはしていない」などとうそぶく、業者の声が聞こえてきそうです。以前、ある予備校で宅建士講座の講師をしている方から、「宅建業法というのは、業者が悪事を働くことを前提に作られている」と聞いたことがありますが、いかにもわが業界らしいとも思えます。

リースバックが広がる社会的背景

リースバックがこのように“流行”する背景には、別の社会問題もはらんでいます。物価の上昇や生涯現役と言えば聞こえはいいのですが、役職定年を迎えたり、定年退職後の再雇用制度を活用したりしても、年収は下がってしまうのが一般的です。それでも、住宅ローンはあと 5 年、10 年残っているなどといったケースもあるでしょう。

また、かつては相続のときには、相続人の間で「誰が親の家を相続するか」で揉めていましたが、今は住む気のない家を「誰に押し付けるか」で揉める時代です。空き家問題の背景にはこのような事情もあります。

最近の高齢者とは、高度経済成長期には若者として過ごし、バブル景気の時代には働き盛りだった世代。ですから、今でも不動産というものに対して、無敵の財産であるというような、ある種の幻想を抱いている人は多いものです。だからこそ、親のほうは子が不動産を喜んで相続してくれると考えているけれど、子のほうは迷惑千万というギャップがこじらせにつながるわけです。放置空き家まっしぐらです。

そんな現状の中、欲しくもない持ち家を残される子たちを思い、リースバックを検討するという人は、本当に立派だと思います。だからこそ、リースバックを“悪用”する輩は困ったものです。

制度の本質とリスクの核心

リースバックは制度そのものが悪いのではなく、先祖代々、家を引き継ぐ必要のない人にはむしろ良い制度。それを悪用する業者と、まだ整わない法整備やガイドラインが存在しないことが問題だということです。

まず、買主(業者側)が 50 歳以上の人が所有する、築 20 年超の家をどうして喜んで買ってくれるかということを、シビアに考える必要があります。買う側は、一般の中古住宅売買のように、自分が住みたいと考えているとは限りません。高く貸すなり、転売するなどして儲けたいと考えている場合がほとんどです。だからこそ、安く買い叩かれるのは仕方ない。それでもよければ、という話になりますが、そんなことを業者の側から言いません。

また、前述の 2026 年 4 月 5 日号の東京民報にも事例として取り上げられていますが、建物貸借契約の種類にも注意が必要です。期限が来たら契約が終了する、定期借家契約という形態で締結すると、たとえば 5 年契約で 5 年後には再契約なしで、本当に追い出されるということにもなりかねません。

厳しい言い方かもしれませんが、不動産屋も金融機関も、あなたの今後の人生に一切興味はないのです。それくらいの気持ちでいつつ、リースバックの利用を検討するときは、専門家の助言が必須です。

記事情報

  • 最終更新日:2026年5月2日
  • 著者:阿部浩一@合同会社うんすい宅建
  • 出典:
    • 不動産適正取引推進機構「RETIO メルマガ第234号」(2026年5月1日)
    • 東京民報(2026年4月5日号)
  • 調査補足:
    リースバックは高齢者の資金需要と不動産市場の歪みが交差する領域であり、契約構造(売却価格・賃料・契約期間)の非対称性がトラブルの主因となっている。特に定期借家契約の理解不足と、将来キャッシュフローの見積もり欠如がリスク要因である。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です